設立の趣旨

「一般社団法人 医療データベース協会」

Association of Medical Databases in Japan

設立趣意書

2014年1月

発起人 川上 浩司

近年、日本における医療データの利活用への社会的要請が益々高まっております。学術研究においては、レセプトを用いた疫学研究、医療経済研究、医療の質に関する研究等が積極的に取り組まれています。また、産業界においても、例えば製薬企業の製品開発における市場性把握、副作用等の安全性監視、マーケティングにおける処方実態の把握等を、リアルワールドの医療データを通じて行うプラクティスが定着しつつあります。こうした背景には、医療情報の電子化の進展があり、公的および民間による医療データベース(以下、医療DB)の構築があります。公的な医療DBにおいては、ナショナルデータベースやセンチネルプロジェクトの検討が進んでおります。また、民間による医療DBにおいては、医科レセプトやDPCレセプト、調剤レセプトや処方箋データ等を活用したデータベースがそれぞれの専門事業者によって提供されております。

上記のような医療DBへのニーズの高まり、医療DBの構築といった潮流がありますが、医療DB産業が更に成長・発展し、医療の質の向上へと本質的に貢献していくためには、乗り越えるべき課題が山積しているのが実情です。例えば、国際的な疫学研究にも通用するデータ品質の保証、そのためのデータバリデーション研究の推進が求められています。その他にも、公的な医療DBと民間による医療DBとの協働のあり方や、患者やデータ提供者のプライバシーに十分配慮したデータベース利活用のあり方、そしてマイナンバー制度の導入を見据えた諸整備など、関係各界を横断して解決されるべき課題が散見されます。

そういった課題の解決に向けた議論は、一部で国家が主導しての検討が進みつつあるものの、民間を巻き込んだ横断的な議論の場に不足しています。民間の医療DBに従事する実務家による活発な議論が不足したままでは、諸課題が解決されないままとなり、日本における医療DBの利活用が限定的である状況が続いてしまいます。その結果、国際的な疫学研究への参加が一部に留まったり、公的な医療DBと民間による医療DBを通じた統合的なスタンダードやプライバシー遵守のガイドラインの確立が遅々として進まず、医療DBの利活用に対して関係者が消極的になってしまうなどの問題が想定されます。

このような状況を受け、我々は「一般社団法人 医療データベース協会」を設立し、各界の関係者が安心して医療DBを活用でき、ひいては医療DB産業が医療の質の向上に貢献できるための環境整備について、民間のデータベース実務家としての立場から意見形成を行っていきます。具体的には、医療DB利活用の促進に向けた諸課題について、関係する各分野の実務家が参加し、課題解決に向けたオープンな議論を行っていき、業界の自主規格を策定し広く普及させることを目指します。こうした活動に対し、関係者各位のご協力、ご支援を得たいと存じます。

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